創立60周年記念 都響スペシャル「すぎやまこういちの交響宇宙」
【魂(こころ)ゆさぶる旋律。今、復活の時!】 1980年に放映されたテレビアニメ『伝説巨神イデオン』の音楽を素材に構築された堂々たる本格的交響曲《イデオン》と、その劇場版のために書かれた《カンタータ・オルビス》、そして都響ソロ・コンサートマスター矢部達哉のために書かれたヴァイオリン協奏曲を組み合わせ、望みうる最高の布陣でお届けするこのコンサートは、都響からのすぎやまこういち氏への感謝とともに、それらが優れたコンサートピースでもあることをライヴで紹介する、都響ならではの創立60周年記念プロジェクトです。すぎやまこういち作品のさらなる魅力の発見になれば幸いです。 フジテレビ勤務時代、ディレクターとしてのみならず作曲編曲も手がけ、数々のヒット番組やヒット曲を生み出し、天才と呼ばれたすぎやまこういちは、独立後、劇場版『科学忍者隊ガッチャマン』(1978年)やテレビアニメ『サイボーグ009』(第2期:1979~80年)の音楽を担当し、斯界(しかい)においてオーケストラを使いこなせる作曲家/編曲家としての評価を不動のものとした。そんなすぎやまに、『伝説巨神イデオン』のスタッフが音楽を依頼したのは、振り返ってみれば歴史的必然だったと言えるだろう。 富野由悠季監督から『イデオン』の構想を聞いたすぎやまは、その世界観を表現するためにオーケストラを使うことを提案した。すぎやまは次のように述懐している。 『イデオン』を手がけるにあたって富野演説を聞いたのですが、哲学的でむずかしい話でした。舞台は広大な宇宙だけれども、描きたいのは人間なのだと。富野さんの口から流れてくることばを聞くうちに、なぜ人間は存在しなければいけないのかわかったようなわからないような。でもそれで『イデオン』のイメージは自分なりにつかんだつもりです。(中略)『イデオン』は、線香花火のようにぱっと当たってその場限り、ではなく5年後、10年後再上映されても鑑賞に堪えうる作品だと思います。それに合わせる音楽も古くならないものでなければならない。そうすると必然的にロックよりも息の長いシンフォニックな曲調の方がいい。宇宙的広がりやスケールの大きさを出すにもシンフォニーはぴったりですよ。―徳間書店『ロマンアルバム・エクストラ48 伝説巨神イデオン』(1982年刊)より かくしてすぎやまは、『イデオン』の音楽素材を用いて、単なる「組曲」ではなく「交響曲」を書くことを決意する。それは、今日の青少年たちが日常的に最も接する機会の多い純粋なオーケストラサウンドはアニメ映画などを通じてであり、したがってオーケストラの機能をフルに活かした『イデオン』の音楽こそそれにふさわしい、というすぎやまの理念と確信からの決断だった。そして、既発表の《オーディオ交響曲》第1番(1976年)、第2番(1977年)に続く、3作目の交響曲として書き上げられた「交響曲《イデオン》」は、厳選されたテーマ群による全4楽章、演奏時間40分近い大作となった。オーケストラは2管編成。電子楽器やドラムセットは用いられない。 キャッチーかつ深みのあるメロディ、さまざまなジャンルの音楽から抽出したエキスのような独特の和声、この交響曲の録音にも参加した名トランぺッター数かず原はら晋しんを想定したと思われるジャズ風ソロやハイノート(最高音はF)など、すぎやまの良い意味でボーダーレスな音楽語法が惜しみなく投入されている。一方で、クラシック音楽に詳しいリスナーなら、この交響曲に、ブラームスやプロコフィエフらの影響を聴きとることは容易だろう。しかしそれは、独学の作曲家が、偉大な先達の書法を消化し、自らの音楽スタイルとの融合を追求し続けた驚くべき成果であり、したがって、そのような指摘はむしろ、オーケストラを駆使して“クラシック音楽”を書くことに情熱を注いだすぎやまこういちにとって本望ではないだろうか。 第1楽章 レント・マエストーソ~アンダンテ・モデラート 冒頭に鳴り響く凛然たるファンファーレ主題(Lento Maestoso)と、次いで弦楽器により奏される流麗な主題(Andante Moderato)による自由なソナタ形式で、交響曲全体への導入的性格を持つ楽章であると同時に、序奏とコーダを持つ演奏会用序曲の佇まいでもある。この2つの主題は、いずれもアニメのエンディングテーマソング《コスモスに君と》から生まれている。前者は主題歌の後半(サビ)部分からの発展、そして後者は主題歌の前半部分そのままである。2つの主題のコントラストは鮮やかで、さらに、展開の途中でさりげなく原曲主題歌のイントロが現れ、アニメを知るファンの心をくすぐるなど、随所にすぎやまこういちの巧さが光っている。 第2楽章 アンダンテ・アッサイ 4音(A-G-C-A)から成る「イデのテーマ」を主題としたミステリアスな楽章。このモティーフが、安らぎや恐怖、あるいは怒りや哀しみを表現するかのごとくさまざま変容していく。中間部に置かれた、ジャズのテイストをまとった2本のトランペットによる長いカデンツァ風のモノローグが、あたかも宇宙空間を漂うかのような浮遊感を醸す。 第3楽章 アレグレット・スケルツァンド プロコフィエフを彷彿させる軽快なスケルツォ。劇中では主に子どもたちの陽気でユーモラスな場面に用いられた音楽が中心となっている。 第4楽章 テンポ・ディ・マルチア 主題と変奏。ブラームスの交響曲第4番第4楽章をモデル―ブラームスが用いたシャコンヌあるいはパッサカリアではないものの―としていることが窺える。 〈主題〉ト短調 Tempo di Marcia(行進曲のテンポで) 4分の4拍子。チェロが16小節の主題を演奏する。これは、サウンドトラックでは「闇からの手」と題された、異星人の存在を暗示するテーマである。 〈第1変奏〉Grandioso 管打楽器の力強い合いの手を伴いながら、弦楽器がわずかに変形された主題を演奏する。ホルンの勇壮なオブリガートが印象的。 〈第2変奏〉 ロ短調 Andante Moderato フルートとオーボエのユニゾンにより奏される主題は、結尾部でフルート二重奏による装飾が施される。 〈第3変奏〉 ハ長調 Andante 弦楽合奏による優しく、古風な味わいの変奏。 〈第4変奏〉変イ長調 Andante moderato 金管楽器が主題を受け渡していき、明るく盛り上がると思いきや、次の変奏に向けて急激に表情を曇らせる。 〈第5変奏〉ここから第10変奏までは、ブラームスの影響が特に色濃いセクションである。ハ短調、4分の3拍子となり、愁いを帯びた弦楽合奏が一気にムードを変える。 〈第6変奏〉ホルンが決然と主題を引き継ぎ、木管楽器と弦楽器が対話を交わしていく。 〈第7変奏〉Andantino フルート、オーボエ、ヴァイオリンソロによる室内楽的な変奏。 〈第8変奏〉Grave 金管楽器によるコラール風変奏。 〈第9変奏〉ホ短調 Allegro moderato スケルツォ風変奏。トロンボーンの短いコラールや、弦楽器と木管楽器に現れる3連符が切迫感を演出。 〈第10変奏〉切なくも美しい弦楽合奏がホルンのコラールとともに昂まると、その熱を鎮めるかのように、落ち着いたトーンに収斂(しゅうれん)していく。フェルマータをはさんで、ト短調でAllegroの導入が猛然と立ち上がり、態勢を整え、Maestosoの 〈第11変奏〉に突入する。これは第1変奏と同じ音楽であり、事実上の主題回帰と言える。4小節のドラムマーチを経て、〈第12変奏〉でトランペットが主題を完全に再現し、うなりを上げる弦楽器の3連符、管打楽器の鋭い打ち込みとともに、クライマックスを築く。そしてAllegroの〈第13変奏〉はそのままコーダとなり、主題は大きく変容し、最後はオーケストラのすべての楽器が、全宇宙に叫ぶかのように、ト長調の壮大なエンディングに向かって上昇していく。 国塩哲紀(東京都交響楽団 芸術主幹)
INFOBOX
资料
- 开始
- 2025年10月19日
- 音乐
- すぎやまこういち
- 类型
- Live
- 地点
- 東京芸術劇場コンサートホール
STAFF
制作人员
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